ヨガと怪我についての考察

ヨガをして体を痛めた、、、という話は一時期よく話題に上がった。

実際にアメリカでは調査も行われ、2001年から2014年の調査によると、ヨガ由来の病院に訪れた数は推定で29,590件(様々な数値をもとに割り出しているので、確定の絶対数ではないところも理解する必要がある)。

重傷者の年齢は、10万件に対して65歳以上が57.9件、45歳から65歳が17.7件、18歳から44歳が11.9件となっている。

 

 

2001年から2014年の怪我の推定をグラフにしたもの。

年々上昇しているのは、ヨガ実践者が増えた=運動初心者が参加した確率が高くなっているということも言えると考える。

考察では2005年以降の怪我の件数が増えているので、それは(動きの)技術的な側面と経験の低さが関係しているであろうとの見方をしている。また同時に指導者の指導技術にも関係しているとの考察。

ただその指導者がどのような教育を受けたのか、、、は限定されていないので、なんとも判断は難しい。(ヨガ好きの主婦が教えている可能性もあるだろうし、、、)

そのうちもっとも怪我の多かった部位は、

体幹(46.6%)
下肢(21.9%)
頭部(16.9%)
上肢(8.8%)

そして最も多かった怪我の種類は、

捻挫や筋損傷 45.0%
不明 32.7%
その他 10.2%
骨折 4.7%
擦傷・切り傷 3.9%
脱臼 3.2%

となっている。うち、入院したのが3.4%。

 

 

体幹(脊柱、腰部、肋骨回り)がおそらく怪我のレポートとしては多いことは、人間のサバイバルメカニズムとしてそこに違和感が出たら痛みや不快感として現れるのでもっともなことである。

上のレポートが出たときは、ヨガ業界は一瞬騒然とした。

危機感を感じたスタジオ経営者もいたかもしれない(経営者は見てないか、、、)。何か新しいことが始まったときには、必ず今まで見たことがないデータが現れる。大事なのはそれに対してどう対応するか、ということ。

先にも書きましたが、ヨガブームにのり、ヨガなら気軽にできそうだから、、、と始めた運動初心者は多い。かつその初心者の多くが、子供のころの運動経験がない人が多いことが推測される。

子供のころにスポーツ経験が歩かないかは非常に大きな違いを生む。子供のころに動きを経験しているというだけでなく、痛みに対するとらえ方が全く違うから。

つまりは、新しいお客様が来られた時には、かならず子供のころの運動経験の有無、かつどのような運動をしてきたのかを尋ねることは大切になる。

水泳をしていた人と、バスケットでガンガンスポーツをしていた人、剣道と陸上では、痛みや体の使い方が圧倒的に異なる。

指導者として考えるべきは、けがをさせないようにレッスンを進めだけではなく(それは当たり前なのだから)、運動初心者を把握できていたか、運動初心者に合わせた言葉がけや動きの積み上げはできていたか。また年齢ごとに起こりえる体の変化を理解していたか。運動初心者という人間の体の状態を把握できていたのか、持病や過去の怪我の情報など理解していたか、、そのあたりが怪我の有無に影響を与えると思う。

最近の調査では、2018年に発表された2620名のボランティアによるアンケート調査。

84%は女性で、31歳から60歳が79%を占めた調査の結果。北米とヨーロッパからの回答が主で、54%はヨガによる受傷経験はないとの回答。

受傷経験がある人のうち、28%が軽度の捻挫やなにかしらの痛みで特に医療的な治療は不要、かつ半年以内にその症状がおさまった(って、ヨガのレッスンによるけがで、半年も痛みがあることは個人的には受け入れられない、、、苦笑)、63%が中度の受傷で半年から1年痛みなどが続いた、そしてけがをしたと答えた人のうち9%(全体の4%)が重度の怪我をしたことがあると回答。

著者は怪我をする確率を高める要素として、1)ヨガをする期間が長いこと、そして2)ヨガ指導者とも指摘している。(参照:Wiese, et al. (2018) Injury in yoga asana practice: Assessment of the risks. Bodywork and Movement Therapies. 23(3): 479-488)

 

ここで彼らが最後に考察で述べているのは、ヨガの受傷率というのは、ほかの運動で怪我をする確率とさほど変わらないということ。

ま、この辺りはもう少し丁寧に情報を集めて精査したうえでしか語れないところですが、個人的な感想からも、ヨガ、エアロビクス、ウエイトトレーニング、ピラティス、ダンス、ランニングなどなど、運動によるけがの発生率はそう大きな違いはないのではないかと思っている。

とはいっても、せっかく健康のために、楽しみのためにスタートして運動で怪我をしてしまうのは本当にもったいないこと。

指導する側、場所を提供する側としては、怪我のリスクを最低限にすることが大切になる。

そのためには、怪我のメカニズム(どういう状態がその怪我に結びつくのか)を理解することも大切なことだと思うし、人間の体の構造をもう少し丁寧に追いかけることも大切になる。

どの運動も共通して理解しなくてはいけないことがある。

骨の名前や筋肉の名前を覚えるのではなく、人の動きとはどういう成り立ちの上存在するのか。絶対的な結果を出すには、やはり基本的な人間のいろはを知ることが大切だと思う今日この頃。

 

 

山本邦子, PhD, ATC

 

 

 

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